アニメーションマスタークラス vol.3 (ブロッキングとポリッシュとスペーシングとその他編)

the illusion of lifeAnimation

今回はアニメーションマスタークラスのブロッキングとポリッシュとスペーシングとその他編です。ブロッキングとポリッシュの話だけでなくタイミングとスペーシングの違いやアクティングショットへのアプローチ、アニメーションを学ぶにあたっての心構えや参考書籍などを取り上げます。

このマスタークラスで最も素晴らしかったものが講師のMichal Makarewicz(マイカル・マカレヴィッチ)さんのMayaを使用した実演だったのですが、さすがにそれは再現できません。しかし、このvol.3までの内容はMichal Makarewiczさんの講義でのレイヤードアプローチに関すること以外の大部分をまとめたものになっています(そのため長くなってしまいました‥)。

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  1. タイミングとスペーシング
    1. スペーシングとは
    2. タイミングとは
      1. タイミングの重要性
      2. コントラスト
      3. リズム
      4. Layer of 3
      5. Timing Through Words
      6. 音楽を通してみるタイミング
      7. コメディーのタイミング
  2. ブロッキング
    1. ポーズトゥポーズのブロッキング
    2. Sketch Blocking
    3. レイヤードのブロッキング
  3. アクティングショットへのアプローチ
    1. リファレンスをMayaに入れない
    2. 一番動いているところを探す
    3. 基本のポーズにする
    4. リファレンスと同じようなタイミングにする
    5. タイミングが決まったらストレート・アヘッドで進める
    6. 首の動きを追加
    7. タイムスライダーを見ない
    8. 目と眉毛を追加
    9. ブロッキングの後はセクションごとに作業を進めてゆく
  4. ポリッシュ
    1. 2 types Polish
      1. Physical Polish
      2. Emotional Polish
    2. 動きの中心(またはメインコントローラー)から外側へ
    3. Polish in Phrases
    4. Arc Straights
    5. Lead and follow
    6. Timing Body Movement
    7. Timing the Character to their Surround
    8. Contact
    9. 速い動き
    10. スケール
    11. 残像、ブレ、Jiggle
    12. オーバーラッピング
    13. Squash and Stretch
    14. Breatha
    15. Connectivity Blink
    16. Tension
    17. Facial Polish
      1. Jaw Squash and Stretch
      2. Eye Bags
      3. Squints
      4. Mid Face
      5. Head Squash and Stretch
  5. アニメーションを学ぶにあたって
    1. The illusion of Life 生命を吹き込む魔法
    2. アニメーターズ・サバイバルキット
    3. タイミングが最も重要
    4. be real ではなく feel real
    5. 演技について学ぶ
    6. Status High or Low
    7. 観客に休む時間をあたえる
    8. Specificity(特殊性)
      1. Specific Action
    9. Honest
    10. Less is More
    11. Do you need it?
  6. まとめ

タイミングとスペーシング

講師のMichal Makarewiczさんはアニメーションを学ぶ学生時代にタイミングとスペーシングの違いがどうしてもわからなかったというお話をされました。

スペーシングとは

スペーシングとはフレームとフレームの間の距離のことです。上のボールのアニメーションはすべて同じフレーム(タイミング)で右の同じ位置に移動しますがスペーシングの違いで見え方がだいぶ違います。

タイミングとは

タイミングとは「何かが起こったり起こらなかったりするのにどれくらいかかるのか」です。上のボールの例で例えると到達する時間(フレーム)が違います。

タイミングの重要性

タイミングにはフィジカルなものとエモーショナルなものがあります。

フィジカルなものとは物理的なものです。重いものの場合、動くにも止まるにも長い時間がかかります(イーズインイーズアウト)。巨大な恐竜などは左右の足を持ち上げるにも時間がかかります。

環境による場合は地球なのか、火星なのか月なのか水の中なのかで挙動が大きくかわります。

年齢によっても動きの速さが違います。若い(幼い)と速く(とても)、歳を取るとゆっくりになります。

マテリアルコンポジション。例えばロボットの場合、「動く→止まる→動く」のように動きます(今のロボットは非常にスムーズに(生き物のように)動くのでロボットダンスをイメージしたほうが良いかもしれません)。

エモーショナルなものとは感情的なことです。喜んでいるときと悲しいときでは違います。例として人間が振り返る動き(実写)の例を示されました(思い出す68f、気づく33f、驚く10f)。

また思考プロセスもこのエモーショナルなものに含まれます。考え込んでいて(ゆっくり)、思いつく(速い)場合など。

コントラスト

「止め→速い動き」といったようにホールドして止めをつくることでコントラストを出すことができます。

Even(Predictable(予想できる)) VS Uneven(Unpredictable(予想できない))

一定の動きというものは単調でよくないとされているが、コントラストをつけられるので一概に悪いものではありません。

リズム

シークエンスの中のリズムを表現する必要があります。

Layer of 3

  • 高い、速い、大きい
  • 中間
  • 低い、遅い、小さい

この3つのレイヤーを使い変化をあたえます。

Timing Through Words

句読点。,(カンマ)は6f。:(コロン)は12f。.(ピリオド)は24f。

フレームbyフレームの要素の配置。

音楽を通してみるタイミング

ここで様々な音楽を流して良い例と悪い(退屈な)例を説明されました。

ここで退屈な例としてベートーヴェンのピアノ・ソナタ月光の第1楽章(単調で退屈な例として)と第3楽章(一本調子で速いだけの例)の冒頭部分が流されました。しかし、ベートーヴェンが好きな私としてはこの部分の説明だけはどうしても納得できませんでした(笑)。ピアノ・ソナタというものは基本的には3楽章形式でできておりその中で緩急を‥(音楽を語るブログではないのでやめておきましょう(笑))。

つまり、この部分以外はペーフェクトの内容のセミナーでしたということです(笑)。とうぜんのことながら音楽から学ぶという点は賛同いたします。

コメディーのタイミング

コメディーのタイミングは一概に速いとか遅いとか言うことは出来ないのですが、様々な例を示してくださりました。

Timing for Angry Affect シャープになる(この限りではありませんが)。

Timing for Sad Affect スローになる。スローの場合は一定のままでは難しいので上で説明したLayer of 3 のミディアム、ハイ、ローを混ぜて使う必要があります

ブロッキング

ブロッキングにも様々な種類があります。その中で主に3つのブロッキングについて説明がされました。

ポーズトゥポーズのブロッキング

これは3DCGでアニメーションをやっている人にはお馴染みのスタンダードなブロッキングといえるでしょう。ステップドカーブで作られたブロッキングから段階を踏むごとに細部の動きが追加されてゆく例が示されました。モンスターズ・インクのサリーの例だったのですが、メイキング等の映像で目にする機会も多かったものなので探せば見つかるかもしれません。

Sketch Blocking

これはドローイングによるブロッキングです。こちらもピクサーの映画のメイキング等で観たことがある人が多いと思います。利点としては絵を描くことが得意ならば素早く仕上げることができることです。ただ、ドローイングから実際の作業に移った際に「2Dではよかったけど3Dではいまいちだから変えよう」といった修正もあるそうです。

レイヤードのブロッキング

ブロッキングというものはポーズを見せるものという固定観念があったので、レイヤードのブロッキングというものがどういうものか想像がつきませんでした。

ファインディング・ドリーでドリーが話すショットの例で説明がされました。まず台詞にあわせてドリーのTranslateの動きだけをつけます。次にrotateの動きをレイヤードでつけます。そして、ヒレの動きや目の動き、アゴの動きなどを加えていったものをブロッキングとして見せるということでした。

このレイヤードのブロッキングの利点としては、まずはレイヤードなので作業が早く終わることです。そして私が驚いたのがヒレの動きや目や口(アゴ)の動きもついているために完成形に最も近い形のブロッキングだということです。この場合はSketch Blockingのように「2Dだと良かったんだけど‥」といったようなことがありません。私が考える限りにおいては欠点はありません。

このような点からもレイヤードの凄さを思い知らされました。

また、作業スピードが速いことによって他の人よりも試行錯誤の回数が増やせるので様々な挑戦が行えるということです。作業スピードが遅いとどうしても無難な方向へ行ってしまうというのはまさにそのとおりです。Michal Makarewiczさんは「私ならブロッキングは45分で終わる」ということを何度も仰られました。ただし、「作業スピードが速いからと言っても1ショットにかけられる時間は他の人と一緒にしてもらうようにしている」とも仰られました。日本の場合はできる人に仕事がどんどん集中してしまうような気がしてしまうのでアメリカ(Pixar)は素晴らしいと思いました。ちゃんと試行錯誤する創造性もアニメーターの仕事として認識されているのは羨ましい限りです。

アクティングショットへのアプローチ

ここはMichal Makarewiczさんによる実演を通してのアクティングショット(座っているキャラが振り向いて会話する)作成の手順です。実演を観ていないとわからないかもしれませんが忘備録として書いておきます。

リファレンスをMayaに入れない

Michal MakarewiczさんはリファレンスをMayaに入れて作業することはありませんでした。リファレンスからは感じるものを持ってくるのが重要だとのことです。

一番動いているところを探す

一番動いているところを探し、そこからアニメーションをつけ始めます。このショットでは頭だったので最初に頭のアニメーションをつけてそれをマスタースプラインとして後々使いまわします。

基本のポーズにする

表情がついている場合は表情をつけます。

リファレンスと同じようなタイミングにする

リファレンスを参考にしながらタイミングを決めます。

タイミングが決まったらストレート・アヘッドで進める

ストレート・アヘッドで進めるので動きがなめらかです。

首の動きを追加

マスタースプラインの頭の動きを首にもってきて調整します。バッファカーブを表示してそれを参考にして作業を進めます。

タイムスライダーを見ない

レイヤードアプローチの場合はキーがぐちゃぐちゃになってしまうので見ないほうがよいです(特にポーズトゥポーズのブロッキングに慣れている人)。グラフエディターだけを見ていればパニックになりません(グラフエディターではアニメーションカーブはしっかり管理されています)。

目と眉毛を追加

頭で捉えて→目→眉毛(このショットの場合)と動く動きをつくります。レイヤードでは目線の動きでエイムコンストレインを使いません。目の動きは頭のマスタースプラインの動きにカウンターをつけることによって頭が動いても目線が動かない動きが作れます

ブロッキングの後はセクションごとに作業を進めてゆく

セクションごととは、体の部位ごとであったり、フレーム数が多い場合はフレームごとに区切ったりします。

ポリッシュ

ポリッシュとは修正ではなくてアニメーションのクオリティーを一歩進めるものです。

Last 10% of layred animation, that can make your shot go from “good” to “GREAT”.

よくある間違いとしてグラフエディターでスプラインをきれいにしてしまって逆に動きが台無しになってしまうことです。

Layred about connectivity

繋がり、連動性をより良いものにします。

2 types Polish

ポリッシュには2つのタイプのポリッシュがあります。

Physical Polish

環境、力、キャラクターのすべての要素が連動して動くようにします。

  • Bend Bow(ひねりのコントローラー)を使用して調整したり
  • Squash and Stretch を加えたり

小さいことを沢山やると効果があります。

Emotional Polish

ラストレベルの感情を追加します。

Adding ‘er’

~erをつける(より~にする)

動きの中心(またはメインコントローラー)から外側へ

From the Root – out

中心から外側へむかって作業してゆきます。

Polish in Phrases

Natural Breaks within the Shot

フレームごとにルートとなるところを

Arc Straights

鼻、足首、ルート、手等をトラッキングしてみます。

そのアークや直線をチェックします。

Lead and follow

先行する動きと追随する動き。

硬くならないように(柔らかくなりすぎないように)。

Timing Body Movement

体の動きのタイミング

Timing the Character to their Surround

キャラクターを環境にあわせます

Contact

フィジカルコンタクト。設置など。

速い動き

モーションブラーやスミアフレーム。

スケール

手を大きくしたり。

残像、ブレ、Jiggle

動いた後にエネルギーはすぐにはとまれません。

オーバーラッピング

付属物。動かせば良いというものではない。うるさくならないように動きを抑えます。

Squash and Stretch

説明の必要はないでしょう(笑)

Breatha

呼吸

Connectivity Blink

瞬きの連動性

Tension

テンション(としか書きようがないです)

Facial Polish

フェイシャルのポリッシュの手順です。

Jaw Squash and Stretch

アゴの動きにSquash and Stretch を加えます。

鼻の動きを付け足します。

  • Sneer 上下
  • Flares 左右

Eye Bags

涙袋の動き

Squints

目を細める、斜視

Mid Face

顔を上下3分割してその中央部分。

Head Squash and Stretch

頭にもSquash and Stretch を加えます。

頬の動きを表情に連動させます。

アニメーションを学ぶにあたって

アニメーションを学ぶにあたっての心構えのようなものを最後に話されました。そこで2つのおすすめの本を紹介されたのでここでも紹介したいと思います。

The illusion of Life 生命を吹き込む魔法

この本にはあの有名なアニメーションの12の法則が書かれています。日本語版の原文のままを以下に載せておきます。

  • スクオッシュ(潰し)とストレッチ(伸ばし)
  • アンチシペーション(予備動作)
  • ステージング(演出)
  • ストレート・アヘッド(逐次描き)とポーズ・トゥ・ポーズ(原画による設計)
  • フォロー・スルーとオーバーラッピング・アクション(あと追いの工夫)
  • スロー・インとスロー・アウト(両端づめ)
  • アーク(運動曲線)
  • 副次アクション
  • タイミング
  • 誇張
  • 実質感のある絵
  • アピール(訴える力)

この本は値段がかなり高く(私が買った初版版は9800円+税でしたが、アマゾンを覗くと中古にプレミアム価格がついています)、厚さも後に紹介する『アニメーターズ・サバイバルキット』の倍くらいあります。というわけで気軽におすすめと言うことはできません。。しかしながらこの本の日本語版は翻訳がスタジオジブリで、発行人が鈴木敏夫、日本語版監修が高畑勲と大塚康生ということなので翻訳本にありがちな翻訳がダメといったことはあろうはずがありません。私はこれを機会に読み返してみたいと思います。

アニメーターズ・サバイバルキット

この本については以前の記事に書いたのでそちらをご参照ください。

まさにバイブル!アニメーターズサバイバルキット
とても有名な本です。アニメーションに興味がある人はすべて読むべき「まさにバイブル!」な『アニメーターズ・サバイバルキット』(著/リチャード・ウィリアムズ)を紹介します。まさにバイブル!アニメーターズサバイバルキット初版...

こちらはプレミアム価格がついていることもないので素直におすすめできます。こちらは初版を買った当初からすべて通読してしまうほど読みやすかったです。上の『The illusion of Life 生命を吹き込む魔法』は12の法則のところしか当時は読みませんでした(反省してちゃんと読み返したいと思います)。

タイミングが最も重要

Michal Makarewiczさん曰く「タイミングが最も重要でバウンシングボールができればなんでもつくることができます。他のものはそれの応用にすぎない。」。

これはまさしくレイヤードアプローチの大家であるMichal Makarewiczさんの言葉だからこそ深く心に刻まれました。私はバウンシングボールのアニメーションを付けている時と人間のアニメーションをポーズ・トゥ・ポーズで作業している時とでかなりの乖離を感じていました。今思えばバウンシングボールはレイヤードのアプローチそのものでタイミングからスタートするものでしたが、ポーズ・トゥ・ポーズではタイミングが後回しにならざるをえないのでそこに乖離を感じたのだと思います。当然のことながらポーズも重要な要素であることは言うまでもありません。

be real ではなく feel real

物理的にリアルなものを作るのではなく、リアルに感じられるものを作る。

演技について学ぶ

演技を学ぶことがアクティングショットを学ぶことです。

演技の難しさは弱さをさらけ出さなくてはならないところです。この壁の乗り越える方法を学ぶことが出来ます。まずは信頼できる人と一緒に演技をすること。

演技の場でディスカッションをすることで実際に作業をするよりも大幅な時間短縮になります。

Status High or Low

このステータスという考え方も演劇のメソッドのひとつです。わたしはパントマイムのレクチャーを受けることによって荒木シゲル氏(アニメーターズ・サバイバルキットの記事を参照)からこのステータスについて学びました。ステータスの高い人は自分自身をコントロールできています。低い人はその逆です。

観客に休む時間をあたえる

動いてばかりいては観るほうがつかれてしまいます。

Specificity(特殊性)

Specific Action

  • Philosophy
  • Personality
  • History
  • Status
  • Circumstance(環境、事情、背景)
  • Intelligence
  • Marks(マーク、印、記号)
  • Tools(Props, Set, Costune)

Honest

正直さ

Less is More

彫刻家のミース・ファン・デル・ローエの名言

余計なものがないほうが良い。

“God is in the detail” 神は細部に宿る(こちらもミース・ファン・デル・ローエの言葉)

Do you need it?

上の言葉と同意ですね。

まとめ

今回のvol.3 はかなり長くなってしまいましたが、これでレイヤードアニメーション以外の内容についてはほぼまとめることができたと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

アニメーションマスタークラス まとめ
PIXARのアニメーターのMichal Makarewicz(マイカル・マカレヴィッチ)さんによるアニメーションマスタークラスの内容をまとめたものです。今までいくつもCGアニメーションのセミナーを受講してきましたが、今まで受講して...

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