鬼武者 Way of the Sword ゲームレビュー

結論から言うと、新生『鬼武者』は今年プレイしたカプコン作品(他はバイオハザード9、プラグマタ)の中で文句なしに一番のお気に入りになりました。
シリーズに対する強い思い入れがあったわけでもなく、当初は購入予定すらありませんでした。初代を触ってから20年以上が経っていたため、ほぼ完全新作に触れるような軽い気持ちで手に取ったのですが……難易度「剣戟(戦闘重視)」で挑んだ結果、予想を遥かに超える歯ごたえに途中からすっかり本気で熱中してしまいました。
本作が刺さるのは、「敵のモーションをしっかり見極めて刃を合わせるパリィアクションを、『SEKIRO』よりも少し入りやすい間口で楽しみたい」という方です。
※本記事はストーリーの核心に触れないネタバレなしのレビューです。購入を検討されている方も安心してお読みください。
プレイ環境・クリア状況サマリー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プラットフォーム | PS5 |
| プレイ難易度 | 1周目:剣戟(戦闘重視)でクリア / 2周目:最高難易度「鬼殺(きさつ)」開始 |
| クリア時間 | 約40時間(1周目・寄り道含む体感) |
| やり込み状況 | 1周目はトロフィーを意識した探索を多めにプレイ。プラチナトロフィーまでやり切るかは現在挑戦しながら検討中 |
1. 全体の手触りとゲームテンポ
SNS等では「パリィゲー」として語られることが多い本作ですが、その認識でおおむね合っています。敵の太刀筋や予兆をじっくり観察し、タイミングを合わせて刀を合わせる——近年の高難易度アクションの王道を行く手触りです。
戦闘のベンチマークとしては『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』、そしてビジュアルや時代劇としての物差しには『Ghost of Tsushima(ツシマ)』や『Ghost of Yōtei(ヨウテイ)』の存在を強く意識して作られているのを感じます。『ELDEN RING』のように「相手のモーションを見切って攻略する」感覚にも近いです。
① 『SEKIRO』のヒリつく読み合いと、間口の広い難易度設計
本作には、戦闘重視の「剣戟(けんげき)」と、物語重視の「活劇(かつげき)」という2つの難易度が用意されています。
私は「剣戟」でクリアしたため「活劇」の難易度差は直接体験していませんが、少なくとも「剣戟」の感触としては、『SEKIRO』のストイックな緊張感を残しつつも、より間口を広げて遊びやすくしたバランスだと感じました。
防御・カウンターの手段には、主に「受け流し」「弾き」「一閃」の3段階が存在します。
- 受け流し: タイミングの猶予が最も緩く、安全に対処できる守りの基本。
- 弾き: ジャスト入力で相手の「力動(ゲージ)」を大きく削る。失敗しても通常のガードになりやすいため、リスクとリターンのバランスが良い。
- 一閃: 入力受付フレームが最もシビア。失敗すれば攻撃をまともに被弾して体力がごっそり消し飛ぶものの、成功した際には相手のHPを一気に奪い去る絶大なリターンがある。
さらに敵はガード不能の「つかみ攻撃」も繰り出してきます。格闘ゲームの投げ技と同じで、ただガードを固めているだけでは崩されるため、「間合いを保ち、相手の起こりを見てから適切な技を出す」という立体的な駆け引きが成立しています。
② 他の刀剣アクションとの比較:勝負の焦点の違い
| タイトル | 戦闘の中核思想 | 相手の守りを崩すアプローチ | 空間設計 |
|---|---|---|---|
| ツシマ / ヨウテイ | 相手の武器に「型」を合わせる | 各型の強攻撃で相手のガードゲージを割る | 馬で広大な大地を巡るオープンワールド |
| SEKIRO | 弾き続けて「体幹」を削る | 連続弾きで体幹を蓄積。危険攻撃(危)には見切り・ジャンプ等で即答する | 鉤縄による高低差を活かした立体的な一騎打ち |
| 新生『鬼武者』 | 間合いと予兆を見極める | 弾きで「力動」を削る。つかみには距離や返しで対応し、一閃を狙う | あえて狭いエリアに絞った、戦闘密度の高い濃密空間 |
『ツシマ』や『ヨウテイ』は、敵の兵種に合わせてスタンスを切り替えるジャンケン的な面白さがあり、広大なオープンワールドの中で一騎打ちや暗殺を使い分ける楽しさがありました。
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関連記事Ghost of Yōtei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)プラチナトロフィーレビュー一方『SEKIRO』は、構えの切り替えを排し、刀と刀が絶え間なく火花を散らすリズムの中で体幹を削り切る極限のストイックさを持っています。
それらに対して『鬼武者』は、「間合いの読み合い」に特化しています。
安全に受け流すか、弾きで相手の体勢を崩すか、命懸けで一閃に賭けるか——プレイヤー自身の観察眼と度胸に委ねられた駆け引きが極めて濃密です。
また、ツシマやヨウテイが浮世絵を思わせる鮮やかな色彩と美しい自然美(欧米から見た日本的な様式美)を描いていたのに対し、本作は「雨の中で泥にまみれる生々しい泥臭さ」が際立ちます。これぞ日本のスタジオだからこそ出せる、骨太な時代劇の空気感です。
③ 「一切皆苦」の先に宿る歓喜:なぜこの苦しい道を突き進むのか?
強敵の苛烈な太刀筋を何度も死にながら身体に叩き込み、ようやく撃破したと思えば、次にはさらに凶悪なボスが立ちはだかる——作中で幾度となく投げかけられる「一切皆苦(いっさいかいく)」という言葉は、まさに本作の容赦ないゲーム体験そのものを言い表していました。
ラストボスは非常に手ごわく、プレイ中に「活劇」へ難易度を落とそうかと本気で迷ったほどでした。
しかし、作中で「なぜこの苦しい剣の道を突き進むのか?」と問われた武蔵が、「楽しいから」とただそれだけを口にするやり取りがあります。この台詞には、コントローラーを握りながら強く胸を打たれました。
どれほど打ちのめされ、手が震えるような緊張感を強いられても、プレイヤーが投げ出さずにリトライを繰り返す理由は「ただ、純粋に戦闘そのものが楽しいから」。
過酷な修羅の道を往く武蔵の心境と、画面越しに夢中で刀を振るい続けるプレイヤーの熱量が完全に重なり合っていました。
敵の予兆動作を見極め、粘り強く挑んだ末にラスボスを撃破した瞬間、理不尽さは微塵も感じませんでした。苦難を乗り越えて予測を的中させた瞬間の快感があるからこそ、最後まで熱狂し続けることができたのだと感じます。
2. 3DCGアニメーターが痺れたモーション・演出設計
Mayaを20年以上触り続けている現役の3DCGアニメーター視点で見ても、本作のアニメーションは極めて滑らかで完成度が高いです。主人公だけでなく、対峙する敵キャラクターの一挙手一投足に至るまで、画面全体の動きの質感が美しく調和しています。
① フロムの「硬さ」とカプコンの「しなやかさ」
『SEKIRO』や『ELDEN RING』などフロム・ソフトウェア作品のアクションも素晴らしいですが、フロムのアニメーション(特に敵の挙動)には特有の「硬さ」があります。もちろんその硬さが物理的な重厚感や威圧感を生んでいる面もありますが、個人的にはカプコンの持つ「関節の柔らかさと重心移動のしなやかさ」が非常に好みです。
特に作中で対峙する佐々木巌流の太刀筋は、このしなやかなアニメーション設計と完璧に噛み合っており、見惚れるような美しさがありました。
② 掌底で鍔を弾いて抜く——細部に宿る時代劇の粋
SNSでも大きな話題を呼んでいるのが、「手首(掌底のあたり)で鍔を押し出して抜刀する所作」です。
刀をただ鞘からスッと引き抜くのではなく、抜く直前に掌底で鯉口を切るような「一拍」が手元に入る。刀を抜く所作そのものの格好良さは言うまでもありませんが、この細かな予備動作に宿るキレとウェイト感は、日本人ならではの「粋」の感覚を見事に捉えています。海外のクリエイターにはなかなか辿り着けない、絶妙な美意識の差だと感じました。
海外スタジオが見事な侍アクションを作り上げたことに対し、国内のクリエイターが抱いたであろう悔しさを、この新生『鬼武者』は「泥臭い空気感」と「掌底による抜刀所作」という型破りな格好良さで塗り替えてみせました。所作の解像度という一点において、本作は確かな矜持を示しています。
③ あえてオープンワールドを避けた「戦闘純度」の高さ
広大なフィールドを移動している最中、どうしても戦闘の緊張感や熱量は一段落してしまいます。本作があえてエリア型の進行を採用したのは、その剣戟の熱気を最後まで途切れさせないためだと強く感じました。純粋に濃密な立ち回りを味わう上では、この空間設計が完全に正解です。
3. 実在俳優起用の先駆けと、現代に甦った「世界の三船」

初代『鬼武者』といえば、金城武を主人公のフェイスモデルおよび声優に起用したことで当時大きな衝撃を与えました(※松田優作を起用した『2』は未プレイです)。
今でこそ、コジマプロダクションの『DEATH STRANDING』でノーマン・リーダス氏が主役を務めるように、実在の俳優をフルスキャンしてゲームの顔にする試みは世界的な潮流となっています。しかし、その手法を20年以上前のハードで切り拓いていたカプコンの先見性には、今振り返っても驚かされます。
そして今作の主人公を務めるのは、言わずと知れた名優・三船敏郎です。
発表当初は「時代劇だからといって三船敏郎を起用するのは少し直球(安易)すぎないか?」と感じたのも事実でした。しかし実際にゲームを動かしてみると、表情のニュアンスが驚くほど豊かで、非常に人間味あふれる愛すべき主人公として描かれていました。
ご本人から直接パフォーマンスキャプチャを収録できない制約の中で、表情筋の機微や眼差しの力強さをここまで破綻なくアニメーションとして成立させたのは見事のひと言です。まさに「世界の三船ここにあり」、そして「世界のカプコンここにあり(日経平均株価の構成銘柄にも採用されて絶好調)」をまざまざと見せつけられました。
【コラム】出雲の阿国と、90年代の篠原ともえ

プレイしていてどうしても気になってしまったのが、作中に登場する「出雲の阿国」のビジュアルです。どこからどう見ても、『LOVE LOVE あいしてる』時代(シノラー全盛期)の篠原ともえに見えて仕方がありませんでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 髪型 | 短い前髪にお団子ヘア |
| メイク | 顔に施された特徴的なフェイスペイント |
| 小物 | 腕にジャラジャラと重ね付けされたアクセサリー(シノラーのアイコン) |
| 衣装 | カラフルでエキセントリックな配色・シルエット |
| 設定 | 「裁縫が得意」というスキル(※ご自身で個性的な衣装を制作されていた篠原さんを彷彿とさせます) |
ネット上ではこの点に触れている声をあまり見かけず少し寂しいのですが、世代の近い方なら思わずクスッとしてしまうはずです。こうした遊び心のあるキャラクターデザインも、カプコンらしい魅力の一つだと感じます。
4. 正直惜しかった・好みが分かれるポイント
熱中度の高い名作ですが、誰にとっても手放しで快適なタイトルというわけではありません。
ラストボスの長期戦と高い集中力の要求
道中の強ボスたちも骨太ですが、ラスボスはかなりの長期戦を強いられます。ミスが許されない時間が長く続くため、集中力の維持が最大の壁になります。もし「相手の動きを見切る前に疲弊してしまう」と感じた場合は、無理をせず「活劇」への変更を検討しても良いと思います。
ボタン連打では進めない硬派なゲーム性
難易度選択はあるものの、根本の設計は「相手のモーションを観察して受ける」ことが大前提です。無双系のように手軽な連打で敵をなぎ倒す爽快感を求めている方には、少々肩が凝る作風に映るかもしれません。
5. 総評:こんな人におすすめ/合わない人
こんな人におすすめ!
- 刀と刀が激突する本格的なパリィ剣戟をじっくり味わいたい人
- 『SEKIRO』の読み合いに憧れつつも、難易度で足踏みしていた人
- 掌底での抜刀をはじめ、本物の時代劇が持つ細やかな所作に痺れたい人
- 広大なマップ移動よりも、目の前の敵との命のやり取り(戦闘純度)に集中したい人
ここが合わないかも
- 敵の予兆やパターンを観察せず、勢いとボタン連打だけでサクサク進みたい人
- 広大なフィールドを馬で探索するような、オープンワールドの自由度を求めている人
まとめ:2026年カプコンの充実期を象徴するダークホース
\「高画質・トロフィー集めで遊ぶなら(PS5版)」/

【PS5】鬼武者 Way of the Sword
\「携帯モードやいつでも手軽に遊ぶなら(Switch 2版)」/

鬼武者 Way of the Sword -Switch2
2026年のカプコンは、手堅く期待に応えてくれた大作『バイオハザード9』や、ディアナのキャラクター性が話題を呼んだ意欲作『プラグマタ』など、大型IPのヒットが続く充実の年です。
その中で、当初は購入予定すらなく、20年以上ぶりに触れたこの新生『鬼武者』が、個人的には今年プレイしたカプコン作品の中で最も熱狂し、満足度の高かった一本となりました。
カプコンならではのしなやかなモーション設計、手に汗握る剣戟のテンポ、そして三船敏郎という重厚な存在感。敵の動きを見て刀を合わせる「読み合いの面白さ」に飢えているなら、間違いなく手に取る価値のある一本です。
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