3DCGをはじめるために、必要なものといえば当然のことですが、まずはPCが必要になります。
どのようなPCを用意すべきかについては、過去の記事(3DCG用PCの選び方、3DCGをはじめるならこれを買え!《PC編》)を読んでいただくことにします。
今回は、周辺機器(というよりも、3DCG制作の環境を整えるモノ)を紹介します。
キーボードやマウスといったPCの周辺機器を紹介するだけでなく、長い間3DCGをやっていたからこそわかる「もっと早く買っておけばよかった」というモノを重要度の高いものから紹介します。
一番最初に紹介するモノは、いわゆるPCの周辺機器ではありませんが、一番最初に用意して欲しいものです。
出来ることならばスペースの都合からもPCよりも先に用意しておきたいです。


第1位 スタンディングデスク

3DCGに限らず、長時間PC作業をする人に最もおすすめしたいのが、「スタンディングデスク」です。
座りすぎによる弊害については、いろいろなところで指摘されているので、ここで改めて指摘することではないかもしれません。
少し指摘させていただくと、腰が痛くなるといった問題だけではなく、様々な病気の原因にもなり、寿命が縮む可能性まであります(京都府立医科大学大学院医学研究科 地域保健医療疫学 小山講師らの研究グループの論文)。また、メンタルにも悪い影響があります(スポーツ庁 Web広報マガジン)。
スタンディングデスクは、今では色々なメーカーから発売されているので、他のメーカーのもので安くて良いものがあるかもしれません。しかし、私が買った頃はコスパ的にFLEXISPOTのスタンディングデスク1択な状況でした。
私が今でも満足して使っていることから、こちらの製品(私が購入した頃から改良されてもっと良くなっているはず)をおすすめします。
PCの作業環境の話では、「ケチらずに高い椅子を買え!」という方がいます。私も職場でアーロンチェアに座って作業をしていたことがあるので、その意見に反対するつもりはありません。
しかし、いくら良い椅子だとしても座っていることにはかわりありません。よって座りすぎの弊害を克服することは出来ません。それに、価格的にもスタンディングデスクのほうが圧倒的に安価であり、リーズナブルです。それだけ高い椅子にかける費用があるならば、他のもの(使い道はいくらでもあります)に使ったほうが合理的です。
さらに言えば、私のサイトに訪れてくれている人は、若い人が非常に多いということをアナリティクスから認識しています。そうした高い椅子に頼るのは、年をとってから、または、立って作業をするのがキツくなって来てからでも遅くはありません。これから先も長く3DCGを続けていくためには、座りすぎの習慣をやめて、健康的な習慣を手にいれることが最も大事です。
とはいえ、良い椅子であることは確かなので、スタンディングデスクを使いながら将来的に手にいれるのは良いでしょう。「この椅子を手に入れるためにがんばる」というモチベーションにつながるならばなお良しです。

第2位 ブルーライトカットメガネ
第2位は、ブルーライトカットメガネです。
ブルーライトカットメガネに関しては、不要論があることはもちろん知っています。
ブルーライトについては、ブルーライトカットメガネに期待できる3つのメリットを専門家が解説というNikeのサイトにある記事を御覧ください。
私の体験談としては、目が痛くてPCのモニターを見るのが非常につらい時期がありました。
その頃に、今回紹介するJINS SCREEN(当時はJINS PCだったと記憶しています)のブルーライトカット率が40%(EN基準、BS基準だと51%)のものを使用することによって、嘘のように改善しました(上のNikeの記事によると、ドライアイの症状が緩解されたのだと思います)。
そうした経験から、同じようにPCのモニターを見ると目が痛くて作業できない(仕事にならない)人におすすめしたいのが、JINS SCREEN(ブルーライトカットメガネ)です。
ブルーライトカットメガネは今では様々なメーカーから発売されていますが、私はJINSのものしか使ったことがないのでJINS SCREENを紹介します。
JINS SCREENは、ブルーライトカット率が40%(EN基準)と25%(EN基準)のものがあります。
25%カット(EN基準)のもの
40%カット(EN基準)のもの
ブルーライトカットメガネの欠点は、色が変わって見えてしまう(カット率が高いほど)ことです。
CGの作業で色を扱う作業が多い場合は、25%カットのもの(厳密な色を扱う場合は一時的にはずしましょう)をおすすめします(もちろん、色を扱わないとき用に40%カットのものを用意するのもありです)。
色と関係がない、アニメーション作業や、リギング、スクリプト作業といったものが多い場合は、私と同じように40%カットのものをおすすめします。
また、すでにメガネを掛けている方(または、気に入ったフレームのメガネを作りたい方)は、
「フレーム価格 + 5500円」
で、JINS SCREENレンズを入れることができます。
DAILY | HEAVY | NIGHT | |
---|---|---|---|
用途 | 自然な見た目で日常使いに | PC・スマホの長時間使用に | 寝る前スマホのお供に |
ブルーライトカット率(EN基準) | 25% CUT | 40% CUT | 60% CUT |
ブルーライトカット率(BS基準) | 42% CUT | 51% CUT | 62% CUT |
JINS SCREENレンズの場合は、ブルーライトカット率を3種類の中から選ぶことができます。
どうしても60%カットば良いという場合は、お気に入りのフレームを選んでJINS SCREENレンズを入れましょう。
第3位 モニター
モニターに関しては、長時間ずーーーーっと見続けるモノなので、それなりにお金をかけて良いものを買うべきです。
出来ることならばデュアルモニター(ウルトラワイドモニターという選択肢もあり)にして、作業領域を広くとれるようにしたいところです(サブのモニターは用途にもよりますが、安価なものでも良いでしょう)。
目にやさしいモニター
参考として私が実際につかっているのが、EIZOの「FlexScan EV2785 」です。
が、今は販売されていないので、今のラインナップでいうと「FlexScan EV2740X」です。
このモニターの特徴としては、「目が疲れにくい」ことです。
実は、このモニターを使うようになってから、第2位で紹介したJINS SCREENのメガネを使っていません。ということで非常に満足して使っています。

ゲーミングモニター
以前は基本的にPCではゲームをしない派でした。しかし、Unreal EngineやUEFNを触るようになってから、ゲーミングモニターが欲しくなりました。
そこで、応答速度や、色域、HDR、リフレッシュレートの面で、もっとスペックが上のものが欲しいというのも正直な話です。また、4Kという解像度で27インチのモニターだと文字が小さくなってしまうので、150%に拡大して使っています。そうした理由で、出来ることならばもうひとまわり大きなディスプレイが欲しくなってしまいました。
注意しなければいけないのは、ゲーミングモニターの場合は色や視野角の問題で、TN方式やVA方式といったものはCG用途にはあまり適していないのでIPS方式(理想を言えばミニLEDの量子ドット)のもの、または有機EL(OLED)のものを選びましょう。

「BenQ MOBIUS EX321UX」は、高価ながらも必要な条件をすべて満たしてくれるゲーミングモニターです。
予算が許せばこれが欲しいなぁ…。

「BenQ MOBIUS EX321UX」は、「確かに素晴らしいけど高すぎる…」という場合には、コスパ最高のINNOCNのゲーミングモニターが、ほぼ10万円ほど安く買えてしまいます。
「本当にこんなに安くて大丈夫なの?」という方は、様々な口コミを調べてみましょう。
確かにこの値段でこの性能というのは非常に魅力的です。
カラーマネジメントモニター
カラーマネジメントモニターを使ったことがないのですが、EIZOのモニターを選んでおけば品質的に間違いないでしょう。
他にもカラーマネジメントモニターがあるので、「EIZOのカラーマネジメントモニター」のサイトを見てみましょう。
第4位 ペンタブレット

体への負担を減らす周辺機器として、次に紹介するのは、ペンタブレット(板タブレット)です。
3DCGを始めた頃は、安いマウスでも全く問題なく作業できていました。
ペンタブ(板タブ)を使うのは、テクスチャ作成時か、スキンウェイトを塗るために使うくらいでした。
ところが、10年を越えたあたりからでしょうか。三の腕(肘から手首まで)が痛くなるようになってしまいました。
平らなマウスを握っていると、机と手のひらが平行になります。その状態では三の腕を内側にひねっていることになります。微妙な角度ですが、このひねり状態を10年くらい続けていることからか(または、ただ単に10年年をとったからなのか…)、痛みが出てきました。
そうしたわけで、外側に手首をひねるペンを持つ状態のほうが負担が少なくなります。
ただし、ペンタブは操作に慣れるのに時間がかかるので、「あるていど3DCGの操作に慣れてからでも良いのかな…」という理由で2番目のおすすめとして取り上げました。経験上すぐには痛くなることはない(個人差はあると思いますが、渡しの場合だと10年くらいは問題ありませんでした)。
ペンタブを選ぶうえでの問題は大きさです。
一般的には画面の大きさと同じようなものが好ましいとされています。
しかし、大きいペンタブでは、移動量が大きくなってしまう(上にあるメニューから、下にあるタイムスライダーを触る場合など)ので、まずは小さいものから使ってみることをおすすめします(小さいもののほうが安いですし)。
小さいペンタブの利点としては、移動距離が短くてすむということです。また、ペンタブの場合はカーソルの移動に絶対座標を用いるのが一般的ですが、マウスのように相対座標で操作することも一つの手段です(これでも移動距離が短くなります)。
今はいろいろなメーカーのペンタブがあるようですが、私が使ったことがあるのがWacomのものしかないので、WacomのIntuosをおすすめします。
今は、ProではないIntuosでも、筆圧レベルが4096もあります(私が最初に買ったIntuos3が筆圧レベル1024だったののに…)。Z-Brushでも使わない限りは筆圧はあまり関係ないかもしれませんが、4096もあれば十分すぎると思います。
Intuos Proのほうは筆圧レベルが8192あるのと、より大きいものを選べること、そして、ペンが違います。
ペンの使いやすさは実際に家電量販店などで試してみて気に入った方を買えば良いと思いますが、まずは、ノーマルのIntuosで始めてみましょう。ノーマルのIntuosもMサイズのものがあるので、大きいほうが良い方はそちらにしましょう。

第5位 マウス

「第4位でペンタブを紹介しておきながら、第5位がマウスかよ…」との声も聞こえてきそうですが、説明させてください。
ペンタブは慣れるまでに時間がかかることが最大のデメリットです。
そこで、手首の負担が軽くなるマウスを使うというのがマウスが第5位になった理由です。
具体的には、ちょっと斜めになっているマウスのことです。
トラックボールという選択肢もあるのかもしれませんが、細かい作業には向かないと思うのと、私自身が使ったことがないので取り上げません。
それで、紹介するのが「 MXV1s MX Vertical」です。
このマウスは、MX Verticalの独自の57度の垂直角度によって、手首への負担が大幅に減ります。
「最高じゃないか!」と思い使い始めたのですが、ホイール(中ボタン)を推しながらドラッグする操作がやりづらかった(動いてしまう)ので、別のマウス(「MX MASTER3s」)を使うことになってしまいました。
こちらの「MX MASTER3s」は、斜めになっている角度が浅いので、すぐに違和感なく(それどころか非常に快適に)操作出来ました。
ペンタブが良いといっても、ブラウジングのようにマウスのほうが快適なものもあるので、マウスも必要な道具であることにはかわりありません。
このあたりは完全に個人の好みでかまわないのですが、おすすめするとすれば、「ペンタブ」で、とりあえずマウスは今使っているもので構わないと思います。

第6位 キーボード
ここで私が紹介するものは、はっきり言うと「趣味の領域」にすぎません。
3DCGの作業で言えば、キーボードでスクリプト(プログラム)を入力している時間よりも、マウスやペンタブでカーソルを動かしている時間のほうが長いので、どうしてもマウスやペンタブよりも優先順位が低くなってしまいます。
3DCG用途でおすすめのキーボードというものは、正直に言うと特にありません。
しかしながら、敢えて「どういったモノが良いか?」と聞かれれば、「テンキーがついているモノ」と答えます。
世間での流行りは、テンキーレスで、コンパクトなモノのようですが、3DCGの用途においては断然テンキーつきのほうが良いです。
テンキーつきキーボードのほうが良い理由
- 数値を入力することが多い。
- 同じ数字やエンターキーでも、フルキー(テンキーじゃないほう)のモノとテンキーのモノでは別物として扱われる(例:Mayaの場合、スクリプトエディターでフルキーのエンターは改行だが、テンキーのエンターはスクリプトの実行など)。
- 同じキーでもテンキーとフルキーでは、別物扱いなので、HotKey(ショートカットキー)をよりたくさん割り当てることができる。
そして、キーボード選びのもう一つの問題として、「日本語(JIS配列)か英語(US配列)か?」で迷う場合があります(迷わない場合は素直に日本語が良いです)。
その場合の判断基準は、スクリプト(プログラム)を書くかどうか(頻度が高いか)?で決めましょう。
スクリプトやプログラムでよく使う[]や{}のキーが隣同士にあるので入力しやすいということがあります。
ただし、それなりのエディタを使っている場合は閉じる方のカッコを入力しなくて良い場合がほとんどです。
とはいえ、最終的には「USキーボードはデザイン的にカッコイイから」というのがほとんどの人が、あえてUSキーボードを選ぶ最も大きな理由です。
デザイン的には、フルキー部分がほぼ左右対称になっていたり、キーにひらがなの印字がないので、スッキリしているといったところです。
結局、USキーボードを選ぶ人は、世間的には変わり者の部類に入ります。
ほとんどの人が日本語キーボードを選ぶので、自分以外のPCを触る際には日本語キーボードを触ることになります。
よほどのこだわりがない限り、PC自体にまだ慣れていない人は、日本語キーボードを選んだほうが良いでしょう。
私もたまに日本語キーボードを使うと打ち間違えることがよくあります。特に、「@(アットマーク)」は、日本語キーボードの場合はShiftキーを押さなくても、一つのキーを打つだけで入力できる(USキーボードの場合はShiftキーを押しながらフルキーの「2」を押さなければならない)ので、ほとんどの人には日本語キーボードのほうが使いやすいです。
ちなみに、こちらで紹介したのは、Real Forceの「静電容量無接点方式」というスイッチ機構で、独特の打鍵感がウリのキーボードです。
同じ「静電容量無接点方式」のキーボードとしては、HHKBという人気商品がありますが、前述の理由からテンキー付きのリアルフォースのほうをおすすめします。
ここまでで紹介したキーボードは、「静電容量無接点方式」による打鍵感が気持ちの良いものでした。
ここまで、スタンディングデスク、マウス、ペンタブといった体に負担のかからないものを紹介してきました。
その流れから、スクリプト(プログラム)を書く作業時間が長い人には体に負担がかからないものを選ぶのも良いのではないでしょうか。


第7位 左手デバイス

左手デバイスは登録したHotKey(ショートカットキー)を使いまくって、作業スピードを上げるためのものです。
3DCGアプリケーションを使うことに慣れた中上級者向けのものなので、初心者のうちは必要ないでしょう。
しかし、左手デバイスを使ってテキパキと作業するのがカッコイイと思い、憧れの気持ちがあるならば、モチベーションをあげるために導入するというのは、良いでしょう。
左手デバイスのメリット
- 複数のキーを組み合わせたショートカット(HotKey)をキーひとつで呼び出せる。
- キーボードより近い位置における。
敢えて左手デバイスを使うメリットは、「複数のキーを組み合わせたショートカット(HotKey)をキーひとつで呼び出せる」はっきりってこれだけです。
「Ctrl + Z」、「Ctrl + Shift + Z」、「Ctrl + C」、「Ctrl + V」といった2、3個のキーを組み合わせたショーットカットをたった1つのキーを押すだけで呼び出せることが、どれだけ時短になるかに気づいたら(ある程度作業量をこなさないと実感しにくいかもしれません)導入を検討してみましょう。
ちなみに、私がこの「Tartarus Pro」を使用したMayaのHotKeyの例がCG WORLDさんの記事にとりあげていただきました。Mayaのアニメーター向きのHotKeyの例が載っているので、Mayaのアニメーターの方はぜひ参考にしてみてください。私のTartarus Proの設定では、まだ空いているキーが4つもあります。そこに独自のHotKeyを登録して、より使いやすい設定を探してみてください。
まとめ
PC本体以外の3DCG用途でおすすめのモノ(周辺機器)を紹介しました。
スペースを用意しないといけないといけないので、導入のハードルは少し高いですが、まずはスタンディングデスクの導入を検討してみてください。何をやるにしても体が資本です。導入するのが早ければ早いほどより充実した3DCGライフを遅れるようになります。
次は、値段的に手にいれやすい、ブルーライトカットメガネです。
特にドライアイで目が痛くて目薬が手放せない人は、すぐに試してみましょう。
もちろん、症状が良くなるという保証はできませんが、私自身は非常に良くなりました。
私個人の感想としては、目が痛くなる前から使っていても良かったかなぁ…と。
さらに体が資本ということで、ペンタブレット(または、体への負担が少ないマウス)を用意しましょう。
ペンタブレットは慣れるのにそれなりに時間がかかるので早めに使い始めたほうが良いです。
ペンタブレットのサイズについては、まずは安価な小さなものからはじめましょう。もっと大きいものが欲しくなったらそのときに考えればよいです。最初から大きくて高価なものを買って合わなかったら金額的にもスペース的にも痛手を被ります。
モニターに関しては、高価な買い物(PC本体よりも長く使えると考えると安い?)なので、とりあえずは安価なサイドモニターを購入して作業スペースを広げるだけでも良いでしょう。
左手デバイスについては、作業の効率化といったものに真剣に向き合う場合は導入してみましょう。
最後に、キーボードに関しては完全に趣味の世界といって良いものなので好きなものを使えば良いと思います。しかし、高級キーボードはキータッチの感覚が良いのでキーボードを叩いているだけでテンションが上がるので、興味がある人はこだわってみましょう。





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