「Overlap Helper」は、Mayaの揺れモノアニメーションを作成するツール(プラグイン)です。
過去にもMayaの揺れモノアニメーションツールは、「LMSpring」と「Overlapper」を紹介しました。
そうした経緯から、「また揺れモノのツール(スクリプト)かよ…」と思った方もいらっしゃるかと思いますが、今回紹介する「Overlap Helper」は過去に紹介したツール(スクリプト)と異なる点があります。
それは、「スキニングされたメッシュ(のバーテックス(頂点))を揺らすことができる」ことです。
つまり、スキニングされたバーテックスを揺らしたいなら、この「Overlap Helper」1択です。
19$と有料ではありますが、その価値は十分にあります。
「Overlap Helper」と「Overlapper」と「LMSpring」の違いを表にまとめました。
Overlap Helper | Overlapper | LMSpring | |
---|---|---|---|
価格 | 19$ | 20$ | 0$ |
Physicsによる揺らし | |||
Physicsを使わない揺らし | |||
ループ機能 | |||
メッシュ(のVertex)を揺らせる | |||
Windといった外部の力を加える | |||
ダウンロード | ダウンロード | ダウンロード |
Maya用揺れモノツール(スクリプト)を選ぶ際のポイント(すべて手に入れてもOK)
- 「LMSpring」は、とりあえず無料で試してみたい人。
- 「Overlapper」は、Windという外部の力を加えられることが最大のポイント。Physicsを使わないのでループを作成できるのもポイント。
- 「Overlap Helper」は、メッシュのVertexを揺らせるのが最大のポイント。Physicsあり、なし両方の揺らし方ができる。ループも作成できる。
Overlap Helper とは
上のYoutube動画を見ればわかるように、髪の毛、尻尾、服、そしてフェイクマッスルを揺らすことが出来ます。
特に注目すべきなのは53秒過ぎからのフェイクマッスルの部分です。
ほとんどの揺れモノツール(スクリプト)が、ジョイントや親子関係のオブジェクトをOverlapさせるのにたいして、この「Overlap Helper」は、スキニングされたメッシュ(のバーテックス(頂点))に適用できるという点が他の多くの揺れモノツール(スクリプト)にはない優れた点です。
上のYoutube動画のように、腹や胸を揺らしたり、フェイクマッスルとして筋肉の揺れを追加したりと、ジョイントとオブジェクトを揺らすだけのツールよりも多くのことが出来ます。
19$(2025年1月6日現在)と有料のツールではありますが、お金を払う価値は十分にあります。
Overlap Helper のインストール方法
「Overlap Helper」は、こちらのGUMROADより購入することができます。
Maya2024までは、ドラッグアンドドロップするだけで良かったのですが、Maya2025になってから多少の手順を踏まないとインストール出来なくなっているので注意してください。
インストールについては、ダウンロードした動画ファイルを見ればやり方がわかるようになっています。
Maya2024以前の場合
Maya2024までは、「Drop me in maya.py」というファイルをMayaのビューポート上にドラッグアンドドロップするだけでOKです。
Maya2025の場合
Maya2025の場合は多少の手順を踏む必要があります。
まず、「C:\Users\ユーザー名(任意のユーザー名)\Documents\maya\2025\scripts」の中に「Overlap Helper」のフォルダをコピーします。
「shelf_cmommend.txt」を開いて、その中のすべてのテキストをコピーします。
Maya2025を起動して、Pythonタブのスクリプトエディターを開き、そこにペーストします。
そこにペーストしたものを全選択(Ctrl + a)して、マウスの中ボタン(ホイール)を押したまま、シェルフにドラッグアンドドロップします。
そのシェルフに出来たアイコン(任意で、Overlap Helperをダウンロードした時もついてきた「OverlapHelperIcon.png」に変更してください)をクリックすれば「Overlap Helper」が立ち上がるようになります。
Overlap Helper のインターフェイス
このYoutube動画を見ればだいたいわかるのですが、一応説明しておきます。
インターフェイスの説明
「Overlap Helper」には、一番上に「Overlap」、「Controller」、「About」の3つのボタンがあります。
この3つのボタンを押すことによって、3つのインターフェイスに切り替えることが出来ます。
Overlap ボタン
Overlap | |
---|---|
Rotat | Rotationモード(Physicsなしで動きます)。 |
Trans | Translationモード(Physicsなしで動きます)。 |
Cus | カスタムモード。 すでにアニメーションがついているものにOverlapを加える。 ※使用方法は上のYoutube動画の1分から |
Physics | Physicsモード(RotationモードとTranslationモードにPhysics(物理シミュレーション)を加えます)。 |
Axis | |
X | X軸をOverlapさせる。 |
Y | Y軸をOverlapさせる。 |
Z | Z軸をOverlapさせる。 |
smoothness | 柔らかくする(デフォルトは3.0)。 大きくすると柔らかくなり、小さくすると固くなる。 |
Scale | 全体のアニメーションの大きさ(デフォルトは1.0)。 |
Overshoot | PhysicsがOnの時のみ有効。 オーバーシュートのコントロール。 |
Ignore the First Control | 最初に選んだものをOverlapさせない(Overlapで新たなアニメーションを追加しない)。 2番目以降に選んだものからOverlapの動きをつける。 |
Hierarchy | 階層構造にあるオブジェクトの親(上にあるもの)を選択するだけで、その子(下にあるもの)以降もOverlapさせる。 |
Loop | アニメーションをサイクルさせる。 ※使用方法は上のYoutube動画の1分45秒から 自分で最初のオブジェクトにサイクルアニメーションを作る必要があります。 |
Add to Animation Layer | アニメーションレイヤーにOverlapアニメーションを作成する。 |
Create | Overlapを作成する実行ボタン。 |
Controller ボタン
「Controller」ボタンは、メッシュに対してコントローラーを作成するときに使用します。
そして、コントローラーの有効範囲のウェイトを調整するのもここで行います。
Controller | |
---|---|
Shape | |
Cube | Cube型のコントローラーを作成する。 |
Sphere | Sphere型のコントローラーを作成する。 |
Name: | 下のボックスで選択したコントローラーの名前を変更する。 |
Scale | 作成したコントローラーのスケール(大きさ)を変える。 |
Weight | どれだけコントローラーに追従するかのウェイトを変える。 |
Paint(Remove) | 2つ以上のVertexからコントローラーを作成した場合、Weightをペイントするモードにする(コントローラーを選んでボタンを押す)。 もう一度押すとRemoveモードになる。 |
Smooth | WeightをSmoothする。 |
□ | Paint WeightモードのブラシのTool Settingを開く。 |
Effect | コントローラーが影響を与える範囲のコントロール。 |
FalloffMode | WeightのFalloffモードを「Surface(デフォルト)」と「Volume」から選択する。 |
FalloffCurve | WeightのFalloffカーブを「Spline(デフォルト)」「Smooth」「Linear」「None」から選択する。 |
Create | コントローラーの作成を実行するボタン。 |
Orient to World Space | 作成するコントローラーの角度をワールドスペースに合わせる(チェックしないとVertexの法線の方向に合わせる)。 |
ボックス | 作成したコントローラーがリスト表示される。 |
About ボタン
「About」ボタンは、「Overlap Helper」の情報(作者のAbdelhalim Abulmagdさんのメールアドレスなど)へアクセスできます。
About | |
---|---|
Script Tutorial | チュートリアルのYoutubeページ(このページで紹介した動画)を開く |
Script Link on gumroad | Overlap HelperのGUMROADページを開く |
Overlap Helper の使い方
はっきり言って、このYoutube動画で使い方が説明されているので、上の動画を見るだけでも十分です。
で終わってしまうわけにもいかないので、簡単なシーンを作ってみました。
せっかくなので、スキニングされたメッシュ(のVertex)を揺らしてみましょう。
Shpereをjointにバインドしたものを用意しました。
そしてOverlap Helperで、Sphereのピンクの○のVertexにボックス型のコントローラーを作成しました。
それからjointに回転のアニメーションをつけました。
最後に、Overlap Helperで、ボックス型のコントローラーに対して、「Trans」と「Physics」にチェックを入れてアニメーションを再生してみました。
このように、ちゃんとスキニングされたボールのメッシュ(のVertex)を揺らすことが出来ました。
まとめ
- スキニングされたメッシュ(のバーテックス(頂点))も揺らすことができる。
- Physicsのありとなしの両方に対応している。
- ループアニメーションを作成できる。
- 有料である。
「Overlap Helper」は、非常に優れたMaya用揺れモノツール(スクリプト)です。
Physicsを使用した揺らし方と、使わない揺らし方(レイヤードアプローチのようにグラフをずらす方法)の両方の揺らし方をさせることができます。ループにも対応しているので、使い勝手が非常に良いです。
さらに最大のポイントはスキニングされたメッシュ(の頂点)を揺らせることです。
このような機能を持ったものは、ほとんどないので、この点だけみてみても「買い」です。
上に書いたように、ほかのMaya用揺れモノツール(スクリプト)にも有用なものがあるので、用途に応じてそれぞれを使い分けてみてください。
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