ライティングをMayaのArnold RenderViewだけで決め切ると、「キーをもう少し落としたい」「リムの色を変えたい」のたびに再レンダーになります。Arnold編 で出した ライトグループ があれば、Fusion では 色と強さ をスライダーで試せます。
ただし、動かせるのは すでに画面に乗っている光 です。ライトの位置や影の形は2Dでは変わりません。そこが違うなら Maya に戻ります。
本記事は 【Maya×Arnold】Light Select(ライトグループ)AOV出力ガイド の続編(Fusion側)です。Vol.8は 2段構成 です。
- Arnold編(前提) …
AOV Light Groupと Beauty(RGBA)の All Light Groups でRGBA_Key/RGBA_Fill/RGBA_Rimを書き出す - 本記事(いまここ) … 加算Merge に組み込み、Color Gain で色と強さを調整する
前回(Vol.7) はモーションブラーをコンポで足す話でした。Vol.8は、キー/フィル/リムを分けて 色と強さをコンポで変える 話です。
今回やることのイメージは次のとおりです。
- マルチパートEXRから
RGBA_Key/RGBA_Fill/RGBA_Rimとemissionを読む - 3灯+emission を加算し、Beauty と照合する
- Color Gain で作例を仕上げる … キーは暖色 + やや弱く、フィルは強さだけ落とす、リムはマゼンダ + 少し立てる(数値は後述)
- 一番下流で ACES Transform
このシーンのネオン(ライトセーバー)は青白く光ります。リムまで青にすると発光と区別がつきにくいので、リムはマゼンタにします。金色のトーラスは、緑のライトが当たると濁って見えやすいので、フィルに緑は使いません。Fill は色を乗せず、強さだけ落として主役にしないようにします。
※ 始める前に、Arnold編 どおり RGBA(All Light Groups オン)+ emission のマルチパート OpenEXR を用意してください。背景とオブジェクトを別EXRに分けた素材は、本記事の作例には使いません。分けている場合は、レイヤーごとに本記事の加算をしたあと、Vol.3の Over で重ねます。
Vol.8を読む順番
【Maya×Arnold】Light Select(ライトグループ)AOV出力ガイド ← 前提(3D側・公開済み)
【Resolve Fusion Vol.8】Light Select入門|Color Gainでライトの色と強さをコンポ調整 ← いま読んでいる記事(Fusion側)
連載の前後






なぜ「BeautyにColor Gain」だけでは足りないのか
Beauty 1枚に Color Gain をかけても、画面全体が明るくなったり色が乗ったりするだけで、キーとリムを別々 には触れません。
ライトグループは、最初から光を3枚に分けてレンダーしたものです。足す前に1枚ずつ Color Gain すれば、「キーだけ」「リムだけ」ができます。Vol.6の Cryptomatte が パーツ の狙い撃ちなら、Vol.8は ライト の狙い撃ちです。
| やりたいこと | 向いている手段 | 色・強さに使うノード |
|---|---|---|
| パーツだけ色を変える | Cryptomatte(Vol.6) | Color Corrector(CC) |
| キーライトだけ落とす | Light Select(本記事) | Color Gain(Clr) |
| 発光の Glow | emission(Vol.5) | (Blur+加算など) |
今回使うシーンと素材
Arnold編 と同じく、Vol.1の幾何シーン(立方体・ゴールドのトーラス・ダイヤモンド・チェッカー地面・ネオン)を、背景とオブジェクトが分かれていない1本の EXR で読みます。
Loader で使う Part は次です。
| Part | 内容 |
|---|---|
RGBA | Beauty。比較用。加算チェーンにはつながない |
RGBA_Key / RGBA_Fill / RGBA_Rim | 各ライトグループ(表記が Key だけのこともある) |
emission | ネオン。ライトグループに乗らない |
Arnold編の答え合わせと同じ式です。
RGBA_Key + RGBA_Fill + RGBA_Rim + emission ≒ Beauty(RGBA)
3灯だけだとネオンが無いぶん暗く見えます。でも正常です。





完成形のノード構成(先にこれだけ覚える)
graph TD
Loader_Key --> ColorGain_Key
Loader_Fill --> ColorGain_Fill
Loader_Rim --> ColorGain_Rim
ColorGain_Key --> Merge_Add1
ColorGain_Fill --> Merge_Add1
Merge_Add1 --> Merge_Add2
ColorGain_Rim --> Merge_Add2
Merge_Add2 --> Merge_Add3
Loader_Emission --> Merge_Add3
Merge_Add3 --> ACESTransform1
ACESTransform1 --> MediaOut1
Loader_Beauty --> ACESTransform2
%% 接続線の色設定(黄色=メイン/背景、緑色=前面/追加要素)
linkStyle 0 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 1 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 2 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 3 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 4 stroke:#8cc63f,stroke-width:2px;
linkStyle 5 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 6 stroke:#8cc63f,stroke-width:2px;
linkStyle 7 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 8 stroke:#8cc63f,stroke-width:2px;
linkStyle 9 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 10 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 11 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;Merge は Vol.1 と同じです。
- Apply Mode: Normal
- Alpha Gain: 0.0
- Additive: 1.0
- ACES Transform は一番下流
Beauty を足さない/素材加算と混ぜない
よくある失敗は、完成した Beauty の上に Key/Fill/Rim をさらに足す ことです。光が二重になります。
Vol.1 の diffuse+specular+… も、すでに全ライト込みです。そのチェーンの上に ライトグループを足しても二重です。どちらか一方にします。
| ルート | 中身 |
|---|---|
| 本記事 | Key+Fill+Rim+emission。Beauty は 見比べ用 |
| Vol.1 | 素材AOVの加算。ライトグループは使わない |
Vol.1 ネットワークがある場合は、加算済み Beauty の 代わりに 本記事の加算結果を ACES Transform へつなぎます。

ステップ1:マルチパートEXRを読む

- Fusion ページで Loader を追加
- Arnold編 のマルチパート EXR を指定
- Inspector の Format で Part を
RGBA_Keyに - Loader を複製し、Part を
RGBA_Fill、RGBA_Rim、emission、比較用のRGBAに変える
名前は Loader_Key / Loader_Fill / Loader_Rim / Loader_Emission / Loader_Beauty が分かりやすいです。
ビューアに Key だけ出すと、キーライトが当たっている部分だけの絵になります。Fill/Rim も同様です。それで正常です。 emission はネオンだけが残ります。
ステップ2:加算Mergeで足して Beauty と照合する

Color Gain を挿す前に、足すと Beauty に戻るか を確認します。ここがずれると、あとの色調整が全部信用できなくなります。
Loader_Keyを黄(Background)、Loader_Fillを緑(Foreground)で Merge(Alpha Gain 0 / Additive 1)- その出力を黄、
Loader_Rimを緑でもう1つ Merge - さらに黄、
Loader_Emissionを緑で Merge(同じ加算) - 左ビューア:
Loader_Beauty - 右ビューア:加算の出力(ACES Transform 前でも差は見える)
だいたい同じ明るさ・同じ陰影なら成功です。3灯のあとに emission を足す前は、ネオンが欠けて暗く見えます。
確認チェックリスト:
- 同じファイル・同じフレーム
- Part が
RGBA_Key/RGBA_Fill/RGBA_Rim/emissionで取り違えていない - Beauty を加算チェーンに つないでいない
- Merge がスクリーンや「普通の Over」になっていない
ステップ3:Color Gainで色と強さを変える
足し算が正しければ、各ライトの Loader と Merge のあいだに Color Gain を入れます。
Vol.6(Cryptomatte) ではシャツや笛の色を Color Corrector(CC) で変えました。今回はライトパス向けに、もうひとつ別のノード——Color Gain(Clr) を使います。Gain の RGB で「乗算の色と強さ」が素直に扱えるので、Key/Fill/Rim の調整に向いています。Shift+Space(Select Tool)で Color Gain または Clr と入力してください。
emission はまず触らず、3灯だけ色と強さを変えます。
graph TD
Loader_Key --> ColorGain_Key
ColorGain_Key --> Merge_Add1
Loader_Fill --> ColorGain_Fill
ColorGain_Fill --> Merge_Add2
Loader_Rim --> ColorGain_Rim
ColorGain_Rim --> Merge_Add3
%% 接続線の色設定(黄色=メイン画像)
linkStyle 0 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 1 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 2 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 3 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 4 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;
linkStyle 5 stroke:#e2cc62,stroke-width:2px;今回の作例(色 + 強さ)
Arnold編ではライトは白・強さそのまま出しています。色も強さもここで変えます。
Color Gain の Gain タブは HEX ではなく、R / G / B を 0〜1 で入れます。Lift/Gamma は触らず、Gain だけ使います。
- 色を変える … Lock R/G/B をオフにして、チャンネル比率をずらす
- 強さだけ変える … Lock R/G/B をオンにして、3チャンネルを同じ倍率で上下する(または手で同じ値にする)
| ライト | やること | Gain(R / G / B)※出発点 |
|---|---|---|
| Key | 暖色にする + やや弱くする | 0.90 / 0.65 / 0.50 |
| Fill | 色はそのまま(白)+ 強さだけ落とす | 0.65 / 0.65 / 0.65(Lock オンで一括でも可) |
| Rim | マゼンタにする + 輪郭を少し立てる | 1.15 / 0.75 / 0.98 |
Key がまだ赤いときは G/B を上げる。影が潰れる/薄いときは Fill の 0.65 を上下。リムが見えにくいときは Rim を少し上げます。判断は ACES Transform のあとで行います。
リムを青にしない理由は、このシーンの emission がすでに青白い からです。リムも青だと「発光」と「ライト」が同じ色温度になり、比較画像でも差が読み取りにくいです。マゼンタなら金の輪郭にも乗りやすく、ネオンとも分かれます。
キーの強さだけ落とす/リムの色だけ変える、でも手順は同じです。作例とアイキャッチは、色と強さの両方を少し動かした方が「Light Select で何ができるか」が伝わります。
ACEScg(リニア)での操作:
| やりたいこと | Color Gain で触るところ |
|---|---|
| 強く/弱く | Gain(乗算) |
| 色味 | Gain の RGB(または Saturation) |
| コントラスト | ライトパスではまず Gain と色。Gamma は後回し |
Lift/Gamma は最初は触らず、Gain だけで十分です。
ビューアは ACES Transform のあと(または MediaOut)で判断します。リニアのままだと色が極端に感じることがあります。
ACES Transform の設定は Vol.1と同じです。
- ACES Version: ACES 2.0
- Input Transform:
ACEScg - CSC - Output Transform:
sRGB piecewise
切り替えで見比べると分かりやすいです。左:Color Gain なし(白3灯+emission ≒ Beauty)。右:Key=暖色でやや弱く・Fill=弱く・Rim=マゼンタで少し立てる。
Vol.1パイプライン上の置き場所
ライト再構築の加算が終わった絵が、Vol.1でいう Beauty_Master 相当です。Vol.7の Vector Motion Blur を使うなら、その あと にブラー、ACES Transform は最後です。
Key/Fill/Rim(各Color Gain)+ emission を加算
→(任意)Vector Motion Blur
→ ACES Transform
→ MediaOutCryptomatte(Vol.6)で一部だけ触りたくなったら、マスクは Color Gain 側へ。まずは画面全体の3灯で十分です。
制限:コンポではできないこと
- ライトの位置・回転・影の形 … 2Dの足し算では変わりません
- グループに入っていないライト … 足しても出てきません
- マテリアルの emission … ライトグループ外。このシーンでは別 Part として足す
- 反射の中のハイライトを物理的に正しく分離 … 近似です。破綻したら Maya のライトを直す
よくあるトラブルと対処
足すと Beauty より白い/飛んでいる
原因: Beauty とライトを両方足している。または Color Gain の Gain が初期から上がっている。
対処: Beauty は比較専用。Color Gain をデフォルトに戻してから足し算を再確認。
足すと Beauty より暗い
原因: グループ漏れ。または emission を足していない(このシーンではネオンが欠ける)。
対処: Arnold編 の確認リスト。3灯のあとに emission を加算する。
色を変えると変な縁・濁り
原因: ACES Transform が加算の前。または sRGB に焼いた PNG。
対処: Transform は最後。OpenEXR・ACEScg のまま Color Gain。
影が薄い
原因: Fill の Gain を上げすぎ。またはキーを下げすぎ。
対処: 1灯ずつ Color Gain をソロ(他の Gain を 0 付近)して、どれが悪さしているか見る。
調整のヒント
| やりたいこと | 触るところ |
|---|---|
| キーを暖色に/少し落とす | ColorGain_Key(例:0.90 / 0.65 / 0.50) |
| リムをマゼンタに/少し立てる | ColorGain_Rim(例:1.15 / 0.75 / 0.98) |
| フィルを抑える(強さだけ) | ColorGain_Fill を 0.65 / 0.65 / 0.65(Lock オン) |
| ネオン | emission はそのまま(Glow までやるなら Vol.5) |
| 最終確認 | ACES Transform → MediaOut |
まずは Rim をマゼンタ にして輪郭が分かるか見ると、ライトグループを出している実感がつかみやすいです。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 前提 | Arnold編 の RGBA+All Light Groups と emission |
| ノード | 各ライト → Color Gain → 加算。最後に emission → ACES Transform |
| Merge | Normal + Alpha Gain 0 + Additive 1(Vol.1) |
| 答え合わせ | Key+Fill+Rim+emission ≒ Beauty。Beauty 自体は足さない |
| 強さ・色 | Color Gain(Clr)。色=RGB比率、強さ=同じ倍率(Fillは Lock オンが分かりやすい) |
| 作例 | Key 0.90/0.65/0.50、Fill 0.65/0.65/0.65、Rim 1.15/0.75/0.98(合わなければ微調整。リムは青にしない) |
再レンダーなしでキーの強さを試せるようになると、「ちょっと暗いな」で Maya に戻る回数が減ります。足りないとき(影の形、ライトの位置)だけ3D側、という分け方です。


次回予告:Vol.9 Z-depth
次回 Vol.9 では 32-bit float の Z-depth を扱います。Arnold の 3D DOF と、Fusion での 2Dボケ・フォグの使い分けです。







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