日本語で読めるMayaのリギング本というと『Mayaリギング 改訂版』くらいしかなかったので待望の新刊です。
今回紹介する『Maya キャラクターリギング – 二足歩行・四足歩行・フェイシャルアニメーション』は、二足歩行の人形のキャラクターだけでなく、四足歩行のキャラクターのリグについて書かれているということで期待せずにはおられません。今回紹介する『Maya キャラクターリギング – 二足歩行・四足歩行・フェイシャルアニメーション』は、二足歩行の人形のキャラクターだけでなく、四足歩行のキャラクターのリグについて書かれているということです。さらに、「フェイシャルアニメーション」という言葉が題名に入っているので期待が高まります。
というわけで早速購入しました。
リギングの本はなぜ少ないのか
3DCGの学習を始めると必ず「モデリング」から始まります。実際に3DCGを始めるきっかけがレンダリングされたキャラクターモデルを見て「自分もこんなものを作ってみたい」という方が多いのではないでしょうか。
また、ディズニーやピクサーの映画を観て、アニメーションをやりたい(キャラクターを動かしたい)と思った方は、今ではフリーのリグがネット上にいろいろと転がっているのでそれらをダウンロードして、すぐにキャラクターアニメーションに取り組むことができます。
それに比べて3DCGをよく知らない人からするとリギングというものは名前どころか存在すら知られていません。よってリギングについて知りたい(やってみたい)という人は必然的に3DCG中級者以上となってしまいます。
実際にチュートリアルをやってみての感想
まず第一に、この本の内容はMayaを使用しての映像用のキャラクターのリギングについての解説だということです。
すべてのjointが一本に繋がっていないリギングの手法です。
ゲーム系の人にはあまり馴染みのない方法であり、海外のリグをいじってみるとこういう感じになっているので私個人としてはとても勉強になりました。
個人的にはサラッと読み飛ばしてしまいそうなところに重要なことが書いてあったりするので注意深くチュートリアルを実際にやりながら階層構造はなぜこうなるのか等をしっかり自分で考えながら(階層構造を制するものはリグを制す!!)学ぶ必要があります。
特に、日頃リガーとしてリグを作りまくっている人以外は、リグを片側だけ作って理解したつもりにならずに、ミラージョイントしたときにどんな問題が起こりやすいかを体感するためにも面倒くさがらずにすべてやってみる必要があります。私もあらためてこのチュートリアルをこなすことでリグって大変面倒なことを地道にやる必要があるということを再認識させられると同時にリグを作ってくれている人に感謝の気持ちが沸き起こってきました。
チュートリアルを実際にやってみて気になった点
Chapter6のP.202~203
四足歩行のリギングで左側の前足と後ろ足をミラージョイントするときにつま先に設定したIKの部分が地面にめり込む形に変形してしまいました。ジョイントオリエントの問題で起こったトラブルのようで、まず、ジョイントを自由に配置したらその位置にロケーターをMatch Translation(位置だけ)をして場所をマーキングしておいて、あとからスナップ(Vキーを押しながら)jointを引くといった対処が必要です。Rigging初心者向けの本としてはMayaの基本機能だけでできることに意義があることは理解できますが、実践的ではないのでjoint orientを修正するスクリプト(私のブログで紹介したもの)などを使って作業をしたほうが良いでしょう。
jointを引いた後に動かすと何かとトラブルになることがあるので注意しましょう。ジョイントの位置や角度を変えたい場合はLocatorを置いて引き直すことを強くおすすめします。
スキニングが最終章になっている
この本のワークフローではスキニングが最終章になるのは仕方のないところですが、初心者が間違った理解でリグをしっかり組んでしまったあとにスキニングをしたときにjointの位置が良くないということをそのときに気づく危険性を感じました。本では仮のスキニングをしてjointの位置をちゃんと確かめるという意味のことが書いてありましたが、全く経験のない初心者が本を途中までしか読んでいない段階で自分のプロジェクトでリギングを始めてしまった場合はそういった懸念もあります。
ちゃんと全部読破(課題をやりながら)すれば問題ないのですが、本を読んでいるうちに自分のプロジェクトでもリギングしたくなる(非常に大事な衝動です)と思うのでその点は注意が必要だと思います。
「フェイシャルは作らないからここまで読んだ内容でやってしまえ!!」と見切り発車してしまうとそうなりやすいです。しかし、失敗から学ぶことも大事なので長い目でみればそれは悪いことではありませんが、しっかり最後までこの本の課題をこなしましょう。
後半(CHAPTER9)以降の解説が駆け足気味
私個人としては最も学びたかったCHAPTER9(フェイシャルリギング)以降の解説が駆け足気味でもっとページ数を割いて解説してほしかったというのが率直な感想です。
本だけではわかりづらい部分
たとえばコントローラーの作り方は後で説明すると書いてありましたが、チュートリアルでは何事もなくコントローラーを使用しての作業になっている(本書のダウンロードファイルにはコントローラーがあるのでそれをimportして作業をすれば問題ないのですが)。
そして、脚(足)のセットアップから始まるのですが、この脚(足)が階層構造を使ったリバースフットのようなものなのですが、手順が複雑なのでもうすこし説明が欲しいところです。
この二足歩行キャラの背骨と首のセットアップがリボンスパイン(リボンリグ)になっています。私はリボンリグは好きなので良いのですが、一般的によく使われているIKスプラインの背骨と首のほうを先に載せて「こんな方法もあるよ」という形でリボンスパインを掲載したほうがよかったと思います。
このサイトと一緒に学ぶと効果倍増!!
本だけではわかりづらい部分は、私のブログの記事を参考にして学習をすすめていただけるとありがたいです。

コントローラーの作成方法
この本ではコントローラーの作成方法は後半で説明されています。
しかし、チュートリアルをスムーズに進めるためにも最初にコントローラーの作成方法を学びましょう。

ジョイントオリエント(joint orient)について
ジョイントを配置するときにはジョイントオリエントを揃える必要があります。
そして、ジョイントオリエントを揃えるにはある程度のルールがあります。
この本では部位によってX軸が子のほうを向いていないものもあり、いろいろと参考になりました。
しかし、基本的には「X軸が子のほうを向かせる」などの原則については、以下の記事を読んでみてください。
そのルールについてとジョイントオリエントを揃えるために非常に便利なツール(MEL)を紹介しています。

ジョイントの回転順序(rotate order)とジンバルロックについて。
ジョイントの回転順序(rotate order)とは何か。そして、なぜ変える必要があるのか。
この本でも回転順序(rotate order)を変更するところがあるのでなぜそのようにするのかを考えながらこの本の課題をやってみてください。

リバースフットリグについて
この本では階層構造を利用したリバースフットのようなもので足にリグを組まれていますが、ジョイントを使用したリバースフットによってよりわかりやすくリバースフットというものを理解しましょう。
いきなり階層構造のリバースフットを理解するのは難しいのでぜひともこちらの記事を読んでから、この本の課題を進めることをおすすめします。

まとめ

- 日本語でMayaのリグに関して学べる(リグの本は非常に少ない)。
- 実際に手を動かしながら体系的に学べる。
- 映像系のリグが学べる。
- 本だけでは、わかりづらい部分がある。
- ゲーム系のリグではない。
- フェイシャルリグについては、あまり触れていない。
日本語でMayaのリグを学べる本は非常に少なく、存在だけでも貴重なものです。
そういう意味だけで買っても損はありません。
jointが全部つながっていないリギングなので、こういう方法にあまり馴染みがなかった私にはとても勉強になりました。
リグの手法は色々あってとても奥が深いものなので様々な方法を学ぶことはとても重要です。ひとつのやりかたにこだわって他を一方的に否定することなく柔軟な姿勢で学ぶことがもっとも重要です。
その他におすすめするMayaのリグに関する本
「Mayaのリギングに関する日本語の本」というものは本当に限られています。
よって、リグに関する本を見つけたら、とにかく全部買ってみるというのもありです。
『Maya リギング 3rd edition』
こちらのほうがストレッチ(伸びる)するリグの説明が詳しかったりします。
3rd editionという版を重ねるごとにパワーアップしている名著です。
『Maya リギング 3rd edition』についてはブックレビューを書いているので詳しくはそちらを御覧ください。

『マヤ道!: The Road of Maya(CG Pro Insights)』
『マヤ道』はMayaでのリギング経験がある人向けです。Mayaの本質に迫る深い内容ですが漫画なので読みやすくなっています。
『Complete Maya programming ー 日本語版 MayaプログラマのためのMEL、C++』
『Complete Maya programming―日本語版 MayaプログラマのためのMEL、C++』は古い本(残念ながら日本語版は絶版?)ですが、注目すべきは第2章の「Mayaの基本概念」の内容です。Mayaがどのように動いているのかを日本語で解説している本でこれ以上のものを私は知りません。本来はmelやC++を学ぶための本ですが、この第2章のためだけにこの本を買っても良いでしょう。
安く状態の良いものが手に入れられるならば考えてみる価値はあります。
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