新たなバイブル(新約聖書?)『キャラクターアニメーション クラッシュコース』ブックレビュー

当ページのリンクには広告が含まれています。

以前このブログで『アニメーターズ・サバイバルキット』を紹介した際に「まさにバイブル」という表現をつかって紹介しました。しかし、「まさにバイブル」な本がここにもう一冊存在します。それが今回紹介する『キャラクターアニメーション クラッシュコース』です。そこで便宜上『アニメーターズ・サバイバルキット』を旧約聖書、『キャラクターアニメーション クラッシュコース』を新約聖書に例えさせていただきます。これはクラシック音楽やピアノが好きな方によく知られているバッハの平均律クラヴィーア曲集が旧約聖書、ベートーヴェンのピアノソナタを新約聖書にたとえられたことにあやかっているだけです。つまりこの2冊の偉大さを表現しただけであって特別な宗教的な意味がないことを一応断っておきます。

目次

『アニメーターズ・サバイバルキット』との違い

いくら素晴らしい本でも内容が全く同じならばどちらか一冊持っているだけで十分だと考える方は多いでしょう。そこでもうひとつのバイブルとの違いを見てみます。

まず『キャラクターアニメーション クラッシュコース』の著者(エリック・ゴールドバーグ)が「はじめに」に書いてある一部を引用します。

長い年月の間には、さまざまなアニメーション関連の本が出版されてきた。(中略)しかし、キャラクターを創造し、動かす方法を徹底的に解説した本は、いったいどこにあるというんだ?

キャラクターの人物像を知らない限り、キャラクターをアニメートすることなどできるはずがない。(中略)基本的な事項でも、本書に含めていないテクニックもある(歩きや走りのバリエーション、古典的なキャラクタータイプなど)。これらはすでに書店に並んでいる別の本で詳しく説明されているはずだ。そのような事項は省略し、なぜアクションがそのように見えるかについて説明し、その動きを作り出すためのテクニックを紹介することに焦点をおいている。

キャラクターアニメーション クラッシュコース 「はじめに」より引用

ここで述べている「歩きや走りのバリエーション、古典的なキャラクタータイプなど」はまさしく『アニメーターズ・サバイバルキット』のことを言っています。

ということでこの「はじめに」の一部を読んだだけで両方読むべきだということは理解していただけたと思います。

ではどちらを先に読むべきか?

『キャラクターアニメーション クラッシュコース』のほうが値段も安くコンパクトにまとまっているのでまずはこちらを先に読むことをおすすめします。こちらではキャラクターにどのように演技をさせるか、またはどのように動かせばそう見せることができるか?に重点が置かれています。

一方、『アニメーターズ・サバイバルキット』では歩きや走りのボディメカニクスが詳しく解説されています。まずはこの原理原則を知ることが第一で、その後、このセオリーを守ったり破ったりすることで様々な歩き、走りが作れるようになります。

『アニメーターズ・サバイバルキット』については以前記事を書いているのでそちらを参照していただけると幸いです。人間の二足歩行だけでなく、犬や馬などの四足歩行についても詳しく解説されています。が、初心者にとってはまだそこまでは必要ないかもしれません。

演技とテクニック

『キャラクターアニメーション クラッシュコース』では「はじめに」で述べられているようにキャラクターに演技させるためのテクニックがとてもよくまとめられています。また、その演技をさせるためのアニメーションで考えるべきことについて書かれています。この考えるべきことが身につけば以後すべての場面で応用できるのでとても重要な部分です。「パントマイムで考える」というところではパントマイムの重要性について書かれています。

パントマイムについては以下のDVD(絶版)かこちらのCGWORLDのオンラインチュートリアルからどうぞ。実際にワークショップを受けてとてもためになりました。

そしてCGアニメーションでのスペーシングというところで手書きとCGアニメーションの違いによる注意点にも触れられています。CGについて語られている部分は少ないですがCGアニメーターとしてはとてもありがたい部分です。

CGアニメーションで多用される止めの手法。ムービングホールドについても解説されています。

会話やリップシンクなどの細かい演技の部分は『アニメーターズ・サバイバルキット』よりも詳しく解説されています。1930年代と1940年代のスタイルと今の時代のスタイルとの違いといったリップシンクの変遷まで書かれています。

どのような人におすすめか

キャラクターアニメーション クラッシュコース
総合評価
( 5 )
メリット
  • アニメーションに関して体系的に学べる
  • アニメーターズサバイバルキットよりもコンパクトにまとまっているので読みやすい
  • CGアニメーションについても少しだけ触れられている(本当にちょっとだけ)
デメリット
  • CGアニメーションについてもっと触れていただけたら嬉しい

これは最初にも書きましたが、バイブル(新約聖書)なのでアニメーションに興味のある人すべてが手元に置いておくべきものです。そして、できれば『アニメーターズ・サバイバルキット』もご一緒に。

もしかしたら「アメリカのアニメーションは日本のアニメーションとは違うから…。こういうのはどうも…」とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。しかし、アニメーションの基本、原理原則は同じなので、ありがたく「聖典」を共有させてもらったほうが絶対にお得です。アニメーションを学ぶ環境はアメリカのほうがオンラインスクールなど充実しています。今では日本人の方が日本人向けにオンラインスクールで教えてくれるところ(チャンスがあれば受けたいのですがすぐに席が埋まってしまうようですね…)もありますが、その方たちは皆アメリカでアニメーションを学んだ方々です。このようにアメリカのアニメーションを学ぶ機会が増えてきた中で学ばないという手はありません。ちょっと前までは「ブロッキング」と言っても周りに意味が伝わらない場面がほとんどでしたが、今はほぼ伝わるようになりました。このように周りとコミュニケーションをとるうえでもアメリカのアニメーションを学ぶ必要があります。

もし、あたながアニメーションについてある程度勉強している場合、この本の目次に出てくる用語はほぼすべて知っているかもしれません。しかし、「知る」「わかる」「出来る」の間には大きな違いがあるように知っているだけではたいした意味はなく、実際に「出来る」ようにならなければなりません。そうするためには常に手元に置いておいて(借りて1回読んだだけではダメです!)実践すること以外に「出来る」ようにはなりません。

こちらもぜひ!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

目次